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  • 執筆者の写真Takayasu Hoshino

帝王切開・高齢出産が増える今、性教育講師・手術室看護師の私にできること


 日本では分娩件数(赤ちゃんを出産する数)は増える一方、その中で帝王切開(手術によって赤ちゃんを出産する方法)は増えつつある。今幼稚園のクラスの25人の中で帝王切開で生まれた子供は5人程度いる。

 帝王切開が増えるその理由には妊娠中に胎児の状態を評価する技術が向上したり経腟分娩のリスクを回避したり、既往帝王切開などの理由のほかに「高齢出産」がある。2010年の「第1子出産時の母親の平均年齢」は30歳である。さらに不妊治療で行われる体外受精では出産方法は帝王切開が選択される。

 「帝王切開」で子どもを産むことになった女性の気持ちには「妊娠が終わる」、「うれしい」という気持ちのほかに「手術が心配」、「子供はどうなるんだろう」などの気持ちがある。また帝王切開を経験した女性の気持ちには「自分の力で産んであげられなかった」、「(緊急手術で)まさか今日、それも手術でお産することになるとは思わなかった」などの自分の意思とは関係ないところでお産が終わることでネガティブな気持ちや挫折感を味わう人もいる。

 さらに、帝王切開で子供を産んだ母親に対して、「楽して産んだ」、「お産の苦しみを知らない」「を通らないと子供は我慢強くならないらしい」ということを周囲の人から言われ、それが母親の心の傷になりその後の育児に支障が出るケースもある。

 今年、初めて女子高校から性教育講演の依頼が来た(^○^)。

 が、そのことで女性のライフプランについて勉強をしてみるとこのような悲しい出来事もある。性教育講演をやっているうえで自分にできることは高齢出産を減らすために、10代の女の子には自分のライフプランについて考えてもらう機会を設けてあげたい。20代前半は仕事をがんばり、20代後半で結婚について考え始め、結局妊娠するのは30代になってからという人も多い。悩ましい問題である。

 さらに、手術室看護師として自分にできることは何か。

 経膣分娩では分娩後に早期母児接触(正期産児において産後すぐに継続的に裸のまま赤ちゃんが母親の上で過ごす)を行うことができる。早期母児接触の利点には母乳育児がうまくいくことや母児の相互関係が良好になることだけでなく、児の血糖値、呼吸・循環が安定することもある。

 しかし、帝王切開で出産した児はすぐにNICUに入室するため母児が分離され母児関係を確立しにくい(早期母児接触をしている施設もある)。さらに新生児呼吸障害の発症率は経腟分娩に比べて帝王切開で起こりやすい。

 手術室看護師としてできることには良好な母児関係を確立するために、早期母児接触はできなくとも「赤ちゃんに触ってもらう」「赤ちゃんの姿を見てもらう」「赤ちゃんの声を聴いてもらう」などをして、母児のふれあいのサポートを行うことができる。帝王切開時に母児のふれあいがないと「赤ちゃんに会いたくない」「こんな子を産んだ覚えはない」という母親もいることがあるため、「母親の心のサポート」を行うことができる。

 帝王切開が「ポジティブ」なイメージで終わるように、そんな声掛けだけでもできるようになりたい。それは帝王切開を受ける母親のそばにいる麻酔科医と外回り看護師しかできないのである


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